院長 堀田信二
当院の治療方針
治療方針を4つの項目に分けてご説明いたします。
1 苦悩・症状についての見方
一般的な治療
これまで私がたずさわってきた、精神科・心療内科での一般的な治療とは、以下のようなものです。
医師が診察し、症状を特定して分類し精神医学の病名・診断(うつ病・双極性障害・統合失調症・不眠症・パニック障害・強迫性障害・発達障害・パーソナリティ障害…等)をつけます。それをもとに、薬物療法や電気けいれん療法、認知行動療法などの専門技術を使い、症状を軽減や調整をすることを目的とした治療を行います。
また、他の資格を持った治療者(看護師・臨床心理士・精神保健福祉士・作業療法士など)が連携し、それぞれの専門的な技術(看護ケア・作業療法・心理療法・心理検査・社会制度や資源の有効活用・心理教育・家族療法…)によって、困り事に対しての解決法を提供します。
自分へのサイン
一方で、精神科医としての臨床を続けるうちに、私はある見方をするようになりました。
それは、苦悩や症状は、「日々の生活で直面する様々な出来事への、これまで身に付けてきた精一杯の対処法が行き詰まっている、という自分自身の内なる声(サイン)」であり、そのサインが自身の中で受け取られずに高じ過ぎ、例えばうつや不安・焦り等の心の症状、また、いろいろな体の症状の形をとって自身を苦しめている、という見方です。その時点では、治療者へのヘルプサインとも言えると思います。
つまり、苦しみや悩み、辛い症状を、治療者と治療を受ける人(クライエント)がともに、「今までの自分の生き方・あり方に対して違和感を覚えているというサイン」として受け取ってみて、「それを見つめ直して細やかにわかっていくこと」を、治療の方向性としたいと考えております。
2 診断する事の限界
心の症状(うつ・不安・焦り・怒り・恐怖・緊張・パニック・気分不安定・妄想・希死念慮…)や原因の特定されない体の症状(頭痛・めまい・耳鳴り・喉のつまり・肩こり・胸の違和感・腰痛・下痢・便秘・震え・痛み・不眠…)、家庭や社会での人間関係上の悩み(親子、夫婦、親族、職場内外、ママ友、ネット上…)は、本当にさまざまです。
それは、人それぞれ今まで生きてきた道(年齢・性別・家族背景・生育環境・身体的素質…)が異なり、各々のパーソナリティが奥深く豊かな色合いを持っていることから来ている、と思います。
そして、例えば、地図をいくら詳しく見ても実際の旅行先での体験をすることは不可能であるように、症状を区別して分類し病名(診断)をつけることにどれだけ労力をかけても、「細やかに個々の人間の生き方・あり方そのものをわかっていく」ことには限界があり、むしろ早飲み込みになってしまう弊害があると思うのです。
3 薬物療法など
また、医師が行う、症状に直接働きかけて軽減する専門技術には、抗うつ薬・抗不安薬・睡眠薬などの薬物療法や、電気けいれん療法などがあり、対症療法として適切にこれらを使うことはある程度有効だと思います。苦悩・症状を取り除きたいと切実に願う方々に対して専門技術で応えることは、治療者の大事な役割であることは間違いありません。
私が違和感を覚えるのは、クライエントはともかく治療者が、専門技術を「クライエントの生き方・あり方を細やかにわかろうとする」方向を助ける道具として使うのではなく、むしろ前述のサインをきれいさっぱり取り除く手段としてとらえていると感じる時や、わかろうとする方向自体に興味がなさそうな場合です。
「難治性」という言葉がありますが、その中には、サインとしての症状を消そうとすることに重きを置きすぎ、上記の方向性がおろそかになっている部分があると思うのです。
4 治療者という立場
「細やかにわかる」が『治療』にどうつながるのかについては、「院長あいさつ」で詳しく書かせていただいたので省きますが、当クリニックでの治療方針は、クライエントが治療者の力を借りる形をとるものの、ともにこの世に生を受けた人間として、両者の間に深い交流が起きることを目指しているとも言えます。
治療者が持つ資格や免許自体が、交流を始めるきっかけにはなっても、人間同士の交流が深まることにどれほど役立つかどうかは疑問です。それよりもまず、治療者自身が自分を深くわかろうとする姿勢があって初めて治療者の立場をとることが出来る、と考えます。
そして、治療をどこまで望むかについての決定権は、治療者ではなくクライエント自身に全面的に委ねられる、とも思っております。
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