苦悩に導かれて(三)主観的不安 | 目白駅から徒歩1分 精神科・心療内科・カウンセリング・精神療法専門  堀田クリニック

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苦悩に導かれて(三)主観的不安

前の記事に書いた個人的な苦悩の体験をきっかけとして、教育分析がスタートし、現在も続いているわけですが、この、自分の感じていることをそのままに見ていく――「我(が)」を自覚するプロセスが進むことで、どうして本来の自然な生き方に導かれると言えるのか、について書いてみようと思います。

僕が日常的に感じている腹部の張りの感覚――主観的不安は、自分の本心を探る時の目印でもあり、治療観の核となるものの一つでもあります。今これを書いている時にも、この感覚がある状態から湧いてくるものを書くように努めています。この感覚があるからこそ奥に本心があると分かる、と書いてもいいかもしれません。

この腹部の張りは、津川先生に教育分析を受け始めた翌年、2011年の夏ごろから胃の部分に生じた感覚です。当時は軽い胃潰瘍か何かがあるのではないかと心配したり、現在では「機能性ディスペプシア」という診断名となっている神経性胃炎の症状や、漢方で言われる「胸脇苦満」という症状ではないかと思い、胃薬や漢方薬を飲んでみたりしました。
分析の場で津川先生にこの感覚を話題にしたところ、
「それは主観的不安だよ」
と言われました。

それから現在に至るまで、この張りの感覚とともに内面を見ていく歩みを進めてきたという感じです。出現した当初は、この感覚にはある種の不快感をともなうことが多かったのですが、この張りと付き合っていくうちに、これがあること自体が自然だと感じるように変化してきました。
別の言い方をすると、これがない方が、今自分は頭だけで考えたり意識性にとらわれたりしていて内面に向かっていない、身体内部の感覚が閉じているのではないか、とチェックする感覚になっています。実際に、その時々での強弱はありますが、この感覚がある時間も徐々に長くなっていきました。
その過程では、分析を受けるだけではなく、分析を受ける前から自分なりに工夫してやっていた呼吸法をして、やがて近藤先生が考えたという呼吸法を教わって毎日朝晩と継続してきたのも助けになっていると思います。初期の頃は、呼吸にともなう身体の感覚を感じていると、感じられていなかった主観的不安が出現してくる、ということもあったことを覚えています。

この張りを自覚してみると、一般的に不安や緊張と呼ぶ感覚――冷や汗が出る、赤面する、ドキドキする、手や声が震える、という時にはっきりとは感じてはいないものの、奥にはこの感覚があると感じられます。
また、怒りや恐怖といった強い感情や、人間関係で認められていない・好かれていない・見放されている・見下されている等の気持ちには、もっと溢れてその自覚からより離れている感じではありますが、やはり奥にはこの感覚があったと感じられます。
日々のセッションでクライエントと話していく中でも、当初は前述のような不安や緊張が溢れた状態に困っているという話題から始まり、一緒にそういう気持ちを見ていくうちに、徐々に溢れる・呑まれることが減っていき、人それぞれの違いはありますが、その人独自の身体内部の感覚の自覚が増してくるという変化が起きてくると感じます。

僕の個人史をさかのぼると、3-4歳の幼稚園の入園前の健康診断か何かの時に、目に映るものすべてが怖くて泣きじゃくった記憶があります。入園後にも、周囲に馴染めない心細い感じ、気後れする感覚を覚えています。
また、少年時代、思春期から20代にかけても「何か違う、何か違う」という焦りに似た感覚が、常に心の底に流れていたように振り返ります。
振り返ると、当時はまったく感じていませんでしたが、これらの感覚の奥には主観的不安の存在があったような気がします。

この主観的不安は、津川先生から教わったものですが、元は近藤先生から教わったものだとのことでした。
「不安というのは氷河のクレバスのようなものだ」
と言われていたとも聞いています。
分厚い氷の下に大地があり、そこに降りていく入り口となる裂け目がクレバスです。以前の僕は、普段の生活で氷の上の世界こそが生きていることであると思い込もうとしていたと思います。たまにこのクレバスが目に入るとそこに落ちないように努力すること、あるいはそこに落ちたとしても高い所に上ろうとすることこそが安心・安定につながる、と思い込んでいることから焦りが生じていたのだと思います。

16年間教育分析を受け続けていく中で、この主観的不安を軸に、前稿(二)の「個人的体験」の時に表面化したさまざまな層のネガティブな感情に呑まれることが減り、それら自体を感じていく方へシフトしてきていると感じています。それとともに、それらの感情を引き起こしていた、今まで無自覚だった思い込みや自縄自縛のあり方が、日常のいたるところで自覚されるようになってきています。気がつくと、以前あったものは減ったり緩んだりしているとも感じています。
また、この主観的不安自体はある種の身体感覚ですが、ここ数年のうちに、その根っこの部分が下腹部――ちょうど丹田と言われるあたりにあるように感じられてきました。それとともに、自分が今どう感じているのか?と内面に注意を向けると、丹田の下の方から湧いてくるということを時々体験します。
それらの体験を通して、主観的不安とともにある、ということこそ、クレバスの下へと降りていく、本来の自然な生き方に導かれていくということではないかと感じています。

2026年9月14日 記

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